道路の左端に自転車専用通行帯のある道路を、クルマやオートバイで走っているとします。
交差点で左折したい。さて、どうする。自転車ではなく、クルマやオートバイのときの話です。
この交差点を、クルマで左折したい。
もしくは、
左側の駐車場に入りたい。
道路交通法をおさらいしてみます。
まず、交差点の左折。
第三十四条 車両は、左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、できる限り道路の左側端に沿つて(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分を通行して)徐行しなければならない。
次に、道路外に出るとき。
第二十五条 車両は、道路外に出るため左折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、徐行しなければならない。
そして車両通行帯との関係。
第二十条 車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によつて指定された自動車を除く。)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。
2 車両は、車両通行帯の設けられた道路において、道路標識等により前項に規定する通行の区分と異なる通行の区分が指定されているときは、当該通行の区分に従い、当該車両通行帯を通行しなければならない。
3 車両は、追越しをするとき、第二十五条第一項若しくは第二項、第三十四条第一項から第五項まで若しくは第三十五条の二の規定により道路の左側端、中央若しくは右側端に寄るとき、第三十五条第一項の規定に従い通行するとき、第二十六条の二第三項の規定によりその通行している車両通行帯をそのまま通行するとき、第四十条第二項の規定により一時進路を譲るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、前二項の規定によらないことができる。この場合において、追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない。
引用元: 道路交通法.
続いて、道路交通法施行令にある、左折時の合図のタイミングについて。
その行為をしようとする地点(交差点においてその行為をする場合にあつては、当該交差点の手前の側端)から三十メートル手前の地点に達したとき。
引用元: 道路交通法施行令.
まとめます。
・交差点を左折するときは道路の左側端に寄る。
・道路外に出るときの左折も同じく左側端に寄る。
・車両は車両通行帯の通行区分に従う。
・左折するために左側端に寄る必要があるときは、道交法第二十条第一項と第二項の規定によらないことができる
・合図は三十メートル手前から
というわけで、神奈川県警茅ヶ崎警察署のWebサイトにおいて、自転車専用通行帯がある道路を自動車が左折する際の振る舞いとして、次のように書かれています。
★道路外に入るときや交差点で左折したいとき★
道路外(駐車場・店舗等)に出るために左折する時、または交差点で左折する時はあらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、できる限り道路の左側端に沿って徐行しなければならないとされているので、交差点等の手前およそ30mの地点から、自転車専用通行帯上を走ることになります。
左折するクルマやオートバイが自転車レーンを塞ぐのはまったくもって合法であり、自転車を巻き込まないための当然の行動ということになります。
もちろん、左折するクルマやオートバイは、交差点直前で前方左に自転車がいたら無理に追い越して自転車の進路を塞ぐように左に寄せてはいけませんし、逆に自転車は、自分の右前方にいるクルマやオートバイが合図を出して左に寄せてきた場合、その進路を妨害するような行為をしてはならないのです。
では、国交省と警察庁による「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」では、どのように書かれているでしょうか。
報道発表資料:「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」について – 国土交通省.
自転車専用通行帯を交差点に直結させる場合は、こう(右上のあたり)。
曲がった先にも自転車専用通行帯があるという前提になっていますが、まず、交差点の手前で自転車専用通行帯とその右の車両通行帯の境目を「黄線」にして、進路変更を禁止してしまう。そして交差点内に「右左折の方法」を示す矢印と破線を描いて、クルマやオートバイが左側端に寄らないようにする……というものです。
ポールを設置するのもアリだよね、の図。
ただしガイドラインでは、このような整備形態の場合について次のようにも書かれています。
信号制御により自動車と自転車を分離しない限り自動車が左折時に後方から進行してくる自転車に注意する必要があることに加え、自転車が優先意識を持ち、自動車を意識しなくなる可能性があるため、通行方法を自転車に周知することに課題がある。
一方、自転車専用通行帯を交差点に直結してしまうのではなく、交差点付近は「混在」にして、東京でいうところの「自転車ナビライン」を描くという方法も示されています。
ここでも曲がった先に自転車専用通行帯がある前提となっていて、やはり「右左折の方法」を示す矢印と破線が使われています。ただし、破線のスタート位置が左側端になっている点に注目。ここでは「自転車ナビライン」のあるところで、自転車もクルマも一列に並ぶことが想定されているからです。曲がった先に自転車専用通行帯がなければ、この矢印と破線も必要ないでしょう。
まぁ、こういう整備形態の交差点にはなかなかお目にかかれないのが現状ではないでしょうか。
ちなみにコペンハーゲンではこんなふうになっているそうです。
自転車的には理想ですが、ドライバー的には大変でしょうね。
というわけで繰り返しになりますが、左折するクルマやオートバイが自転車レーンを塞ぐように左側端に寄るのはのは合法であり、それが正しい行動です。
そしてもちろん、左折するクルマやオートバイは、自転車を無理に追い越して左に寄せるなどして進路を塞いではいけません。
逆に自転車は、すでに自分の前方にいるクルマやオートバイが合図を出して左に寄せてきた場合、その内側に突っ込むようなことをしてはいけないのです。
もちろん、現状よりもより良くする策はあるかと思いますが。
(Gen SUGAI)
須貝 弦(すがい・げん):1975年東京都新宿区生まれ、川崎市麻生区在住。雑誌原稿の編集・取材・執筆の他、企業Webサイトやオフィシャルブログの制作にも携わる。自転車と小田急ロマンスカーが好き。初めてのスポーツ自転車は1986年あたりのアラヤ・マディフォックス。2001年頃にGTのクロスバイクで数年ぶりにスポーツ自転車に復帰。現在のメインの愛車はグラベルロードバイクのGT GRADE ALLOY。