ゴール後は瀬戸内海の絶景ー『第14回 ツール・ド・ゆう』参加レポート

11月22日に山口県岩国市で開催された『第14回 ツール・ド・ゆう』というヒルクライムレースに初参加しましたので、その模様をお送りします。(レポート:田中亮一

第14回 ツール・ド・ゆう

こんな小規模でローカルなレースのレポートにどれだけのニーズがあるのか分からないのですが、実際に参加してみてメジャーな大会に劣らない魅力的を感じたので、それを伝えられればいいかなと。それともうひとつ。大会の公式ページが開設されていないため、興味はあっても詳細が分からず躊躇している方もいるのではないかと思います。なので、そういった観点での情報提供もできれば良いと思っています。

この『ツール・ド・ゆう』は、筆者の実家の近くで開催されているヒルクライムレースとして認識してはいたのですが、なかなか帰郷する機会がなく参加できませんでした。そして去年の末に実家に移り住む事になり、やっとその機会が訪れました。

レースの舞台にはJR由宇駅の近くの麓から大将軍山を経由して銭壺山頂までの8.2km(平均勾配6.3%)と、ショートカットした4.5km(平均勾配5.9%)のコースが設定されています。


より大きな地図で ツール・ド・ゆう 8.2kmコース を表示

クラス分けは年齢・性別・車種(スリック・ブロック)別とチャンピオンクラス。スタートは約20名毎の3分間隔のマスドスタートで、ゴールは目視でのタイム計測でした。

ほとんどの参加者は8.2kmコースなので、そちらを中心にコースを見てみましょう。

プロフィールの数字だけを見ると距離は短いし平均勾配も緩いしでチョロいと思われるかもしれませんが、途中に平坦や下りがあるため登り区間の勾配はもっとキツくなります。筆者が使っているGPSは最大斜度15.7%を記録していました。そして登り区間のほとんどは10%以上というなかなかにハードなコースです。

GPSで実測したコースの断面図はこんな感じです。距離も7.6kmと公式の数字と若干差があります。

TourDeYu

最大斜度15.7%があるのは、コース序盤の団地を抜けて山道に入った500mの地点。スタート直後にも15.1%が待ちかまえていますが、このあたりはまだ脚もフレッシュだし距離も短いので、ダンシングで「ガッ」といけば難なくこなせるでしょう。

問題は下り区間直後の2.8-4.3kmの区間です。ここは14%と12.5%の標識がある地点を含む区間で、10-15%の勾配が連続しています。非常に美しい竹林の姿とは裏腹に、ライダーを苦しめる最難関エリアです。

第14回 ツール・ド・ゆう

この区間をどうこなすかでタイムが大きく変わってくるでしょう。ここを超えると長めの平坦区間があるので、ハイペースで登って平坦で回復を試みたり、あるいはイーブンペースで登って平坦でペースを上げたりと、自分の脚質に合わせた戦略が必要になります。

やはりこの区間で心が折れてしまう参加者が多いようで、沿道には様々な応援メッセージが書かれた看板が立てられています。このあたりはローカルレースならではといったところ。この物言わぬ応援に助けられるライダーも少なくないでしょうね。

そしてメイン会場のふれあいパークまでの平坦と緩斜面をこなせば、ラスト約800mの斜度10-13%の区間です。ここは視界も開け、ヒルクライマーが大好きなつづら折れの登りコースを一望できます。アドレナリンをたぎらせてラストスパートをかける選手や、「まだ登るのか…」と心が折れながらも沿道の声援でなんとかペダルを回す選手、すべてのライダーが最高の達成感を得るために用意された最後のふんばり所です。

第14回 ツール・ド・ゆう

最後の一滴まで力をふり絞る事ができれば、ゴール後には瀬戸内海の絶景が迎えてくれます。

第14回 ツール・ド・ゆう

今回初参加の筆者の成績は31分ジャストという平凡な記録でした。163人中46位と順位も奮わず。元々パワーライダーではないため、長く勾配の緩いコースを淡々と登るのは得意だけど、今回のような急勾配のコースはかなりの苦手分野なのです。

それにしても皆さん速いですね。優勝タイムは24分台ですよ。そしてクラス上位入賞に滑り込むには28分台が必須。この短いコースで2分以上短縮するのは至難の業だなぁ。それでも練習では33分台半ばが限度だったので、2.5分も短縮できたし、ラストの追い込みでも出し切る事ができました。まぁ満足して良い結果かと。

さて、レースコースの事ばかり書いてきましたが、大会全体の事にも触れておきましょう。

個人的には小規模ながら優れたオーガナイズと高いホスピタリティで、非常に好印象を持ちました。参加費4,000円と安くはないのですが、ここまでやってもらえれば十分に元が取れます。抽選会やジャンケン大会、宝探し等のサブイベントは商品も豪華だし、筆者は利用しませんでしたがメイン会場のふれあいパークに非常に安価に宿泊する事もできます。多くのスポンサーさんのおかげですね。

シーズン最後のレース兼チームの忘年会として毎年参加している固定ファンがいるのも頷けます。東京や大阪からの参加者も多くみられました。レース後に浴場が開放されているのも非常にありがたかったです。執筆時点ではまだ公開されていませんが、オールスポーツさんによる写真撮影もありますよ。

改善ポイントを挙げるなら、自走参加者の事が考慮されてないという点でしょうか。地方の大会なので車での参加がデフォルトなのでしょうが、自走参加の場合は受付のためにレース前にメイン会場までの500mを登る必要があります。ウォーミングアップにしてはちとシンドイ。前日受付は宿泊者限定なので、当日の朝登るしかありません。まぁ実際、自走で参加しているのは筆者以外に見かけませんでしたけどね。開会式は一旦下山してスタート地点近くの公園で行われるので、そこで当日受付してもらえると有り難かったですね。

今回の参加者は200名弱だったようですが、この内容であればもっと人気が出ても良い大会だと思います。コースも会場もまだ余裕がありそうなので、もっと広くアピールするなりして参加者を集めてはいかがでしょう。公式サイト作り等、お手伝いできそうな事があれば筆者までコンタクトいただければ(To:大会スタッフの方々)。


田中亮一(たなか・りょういち)
1963年 山口県岩国市生まれ。同市在住。旧由宇町(現岩国市)のヒルクライムレースに参加するというツイートを見て、CyclingEX初の外部執筆者としてレポートをお願いしました。
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