ロードバイクやクロスバイクのメーカー・ブランドってどうなってるの?

ロードバイクやクロスバイクを初めて購入しようとする方が最初にぶつかる壁のひとつが「どんなメーカーやブランドが良いのかわからない」ということではないでしょうか。少なくとも筆者は、まったくわかりませんでした。

「オススメのメーカーやブランドは何?」と聞かれれば個人的な意見として話すことはできますが、そもそも自転車において「メーカーやブランドとは?」と考え始めると、キリがありません。

ひととくちに「メーカー」や「ブランド」と言うけれど

自転車における「メーカー」の定義は、難しいように思います。ファブレスメーカーが増えている世界であり、自社の製品を自社の工場で作っているとは限らないからです。自社工場を持っているメーカーでも、製品によっては製造を外部に任せることもあります。

これは、完成車に採用されているパーツについても同じです。ジャイアントやメリダ、日本ならパナソニックサイクルテックやブリヂストンサイクルといった大手どころであっても、いわゆるメインコンポーネントと呼ばれる変速やブレーキのパーツはシマノ等を使っていますし、ワイヤー類など細かいところまで見れば、それこそキリがありません。

誰の基準で作られているか

そんな世界ですから、当然「A社のアノ自転車とB社のコノ自転車は同じ工場」ということも起きます。ただし、工場が同じで価格帯も似ていれば同じものかというと、そういうことでもありません。どの生産者が作っているかも大事かもしれませんが、同じくらい、誰が設計し、誰の品質要求水準に合わせてあるかが大事ではないでしょうか。

同じ工場で作っていても、A社にとっては「品質の問題でコレなナシだな」という構造が、B社やC社にとっては「ウチ的にはOK」だったりします。

パーツにしても、A社の自転車にX社のパーツが採用されていたとして、ではA社はX社のパーツであればなんでも採用するのかというと、そうでないこともあります。A社にはA社の品質基準があり、それをクリアしたものを採用します。一方のC社も他社パーツを採用する際の基準があるが、A社よりちょっと緩くて……ということは起こり得るのです。

伝統あるブランド=歴史あるひとつの会社とは限らない

伝統のあるブランドでも、ブランドが買われて出自の国とは違う国の会社が保有していることも多いということも、大事なポイントです。アパレル製品の世界では当然ですし、近年は自動車メーカーも離合集散が進んで、例えばMINIがBMWのいちブランドになったりしているのはご存知の通りです。

自転車の場合も、例えばかつてはイタリアの「メーカー」だったものが、合併や商標の売買などを経て、グローバルなメーカーが保有する「ブランド」になったりします。もしくは、商標や知財を管理する会社だけが、いわゆる「本国」として機能し、各国の代理店にライセンスを付与するというやり方もあります。

「ブランド」というものを重視する人も、どこの国うんぬんより、フィロソフィーやストーリーの継続性を重視してはいかがでしょう。そして海外ブランドの場合は、代理店の働きも重要です。

結局のところは販売店がいちばん知っている

というわけで、メーカーとかブランドといったものを考え始めると、なかなか答えが出てきません。そのモノ(そして取り扱っている会社)が確かなのかどうかは、結局のところ、売って、組み立てて、修理している販売店がいちばんよく知っています。ちゃんとした販売店は、変なものをすすめてきません。

ここまで書いておいて元も子もない言い方かもしれませんが、「自転車のメーカーやブランドとは、そういうものである」と理解した上で、自分がかっこいいと感じたもの、お店の人の話を聞いて「信用できそうだ」と思ったものを選ぶのが、いちばんでしょう。

長い前置きを経た上での注目のメーカー・ブランド紹介(随時更新予定)

ここでようやく、実際にスポーツサイクルのメーカーやブランドを紹介していこうと思ったのですが、AからZまで片っ端からやるわけにもいきませんので、国ごとなどいくつかのテーマにまとめた上で「ひとこと紹介」をします。内容は随時アップデートされていく予定です。

※取り上げているブランドには筆者なりの偏りがあります。ここに記載がない=ダメという意味ではありません。

世界のOEM工場、台湾が世界に誇る二大自転車メーカー

GIANT(ジャイアント)
1972年に創業した世界最大の自転車メーカー。OEM製造からスタートしてめきめきと力をつけ、自社ブランドの自転車も販売するようになりました。革新的なアイディアと高い製造技術、レースの世界での目覚ましい活躍などはもはや説明不要。

MERIDA(メリダ)
OEMから自社ブランドの製造まで幅広く手がけるメーカー。自社ブランドの認知度はジャイアントに遅れを取っているイメージがありましたが、ヨーロッパを拠点に高性能なスポーツサイクルを開発して人気が高まっています。スペシャライズドと深い関係にあります。

日本の品質にこだわりたい人のためのジャパニーズ・ブランド

ANCHOR(アンカー)
ブリヂストンサイクルのスポーツ車ブランド。パーツのサイズやカラーを選べるカスタムオーダーに対応したモデルを多くラインナップしています。

ARAYA(アラヤ)
歴史ある新家工業のブランド。アラフォー以上のおっさんには、黎明期の国産MTB「マディフォックス」でおなじみ。

CALAMITA(カラミータ)
イタリアンブランドの輸入・販売などを手がけている、アクションスポーツのオリジナルブランド。安価だが雰囲気満点のスチールバイクをリリース。

PANASONIC(パナソニック)
自転車部門の社名は「パナソニックサイクルテック」。カスタムオーダー対応ラインナップ「POS」で知られる。そのフラッグシップはチタンフレーム。

MIYATA(ミヤタ)
日本の伝統メーカーのひとつで、現在はメリダが筆頭株主。近年は、カジュアルなスポーツ車や電動アシストスポーツ車に力が入っています。

フィットネス大国・アメリカのブランド

CANNONDALE(キャノンデール)
1971年にアメリカで創業。軽量なアルミフレームや独創的な片持ちフロントフォークなどで知られています。現在はカナダに本社を置きアメリカで活動するDorel Industries Inc.(ドレル)のグループに属しているので、アメリカブランドという印象が薄れているのは事実。

FUJI(フジ)
元をたどれば日米富士自転車という日本の歴史あるブランドですが、1996年に食品会社に吸収合併され、その会社が1997年に倒産。自転車部門はアメリカのアドバンススポーツ社の手に渡って、世界的なブランドへと成長しています。

JAMIS(ジェイミス)
1979年にアメリカで立ち上がったブランドで、日本ではクロモリのロードバイクやMTBが有名ですが、そのラインナップは多岐にわたります。フレームサイズごとに使用する素材のパイプ径と肉厚を変えることで、異なるサイズでも同じ乗り味になる設計が特徴。

SPECIALIZED(スペシャライズド)
トレック、ジャイアントと並んでスポーツサイクルのビッグ3的な位置にあり、フィットネス分野からレースシーンまで幅広く活躍。自社工場を持たないファブレスな会社です。人間工学に基づいた設計に注力しており、アクセサリー類も充実。

TREK(トレック)
世界のトップブランドのひとつ。近年日本ではトレックの商品をメインに扱う(自転車本体についてはトレックのみ)「コンセプトストア」が、その数を増やしています。

根強い人気のイタリアブランド

BIANCHI(ビアンキ)
1885年創業の老舗ブランド。現在はヨーロッパの総合自転車商社「Cycleurope」の傘下です。イメージカラーの「チェレステブルー」は有名です。

・CINELLI(チネリ)
元ロードレース選手のチーノ・チネリが1948年に興したブランド。美しいスチールフレーム「スーパーコルサ」は今でも根強い人気があります。また、ピストバイクのファンも多く、二面性のあるブランドとも言えるでしょう。

ポディウム

岩井商会

COLNAGO(コルナゴ)
イタリアを代表するレーシングブランド。中級グレード以下はアジアで生産されていますが、伝統的なフレームジオメトリー、きめ細かなサイズ設定はコルナゴならでは。

DEROSA(デローザ)
12歳からフレーム制作の修行を始めたウーゴ・デローザが、1953年、18歳のときに興したが「デローザ」です。現在ウーゴは第一線を退き、息子たちによって運営されています。

PINARELLO(ピナレロ)
1953年に、元プロレーサーのジョバンニ・ピナレロによって興されたブランド。ツール・ド・フランスで華々しい活躍を見せています。

カジュアルな雰囲気が人気のブランド

GIOS(ジオス)
イタリア発祥で「ジオスブルー」と呼ばれる独特のブルーがイメージカラー。

LOUIS GARNEAU(ルイガノ)
カナダ生まれのブランド。クロスバイクやフラットバーロードのラインナップがたいへん充実しており、カジュアル&ファッショナブルなイメージで人気があります。
より本格的なスポーツラインは「GARNEAU(ガノー)」として展開し、レースシーンでも活躍。

RITEWAY(ライトウェイ)
GTやFELT等の日本国内代理店を務める会社が、日本人向けに設計したオリジナルブランド。中国生産で安価に抑えていますが、変速パーツやブレーキ等のコンポーネントは極力シマノを使っています。

TOKYOBIKE(トーキョーバイク)
東京の街を走るために生まれたシティバイクで、650Cや26インチのホイールを採用したスチールフレームがラインナップの中心です。

日本でも人気の折りたたみ自転車(フォールディングバイク)ブランド

BROMPTON(ブロンプトン)
イギリス生まれの折りたたみ自転車。折りたたみが簡単でコンパクトになり、輪行サイクリングもラクラク。

DAHON(ダホン)
内容と価格のバランスに優れた折りたたみ自転車を多数ラインナップ。
量販系はこちら→DAHON International

PACIFIC(パシフィック)
台湾の大手メーカーのひとつで、かつて日本でBD-1と呼ばれていた「Birdy(バーディ)」や、超小径の「CarryME(キャリーミー)」などがあります。

[最終更新:2020/10/6]

(SUGAI Gen)

自転車が絡む読み物や自転車生活に役立つ商品の紹介を、新しい「CyclingEX」に掲載しています。
自分のために、そして周りのみんなのために。ルールを守って自転車を安全に楽しもう!