「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を少しずつ読む(11)交差点部の設計、左折レーンがある道路ではどうなる!?

「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を少しずつ読む」シリーズ、ようやく今年最初の掲載、通算第11回目です。ガイドラインは下記からどうぞ。

安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン

前回の記事はこちらです。

「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を少しずつ読む(10)パーキングメーター部の設計から、荷捌きや人の乗降についても考えてみる | CyclingEX.

そして今回は、ようやく「II 自転車通行空間の設計」>「2. 交差点部の設計」に入ります。

■連続性がキモである

「2.1 交差点部の設計の基本的な考え方」では、次のように書かれています。

(1)分離形態の連続性
交差点部において歩行者、自転車、自動車の適切な分離、共存を図るため、交差点部の分離形態について、前後の自転車通行空間と同様の形態をできる限り連続的に確保すべきであり、安易に自転車通行空間を自転車歩行者道へ接続しないことを基本とするものとする。

(2)通行空間の直線的な接続
自転車の安全性、快適性を向上させるため、自転車動線の直進性を重視し、一方通行の自転車道、自転車専用通行帯のいずれの場合も、自動車と同じ方向に通行する自転車の交差点部における自転車通行空間は、直線的に接続することを基本とするものとする。

……とも。つまり、いわゆる「単路部」だけではなく「交差点」も含めて、自転車の通行環境は連続性のあるものにするべきであり、交わる道路の自転車通行環境とも直接接続されるできであって、「自転車をいったん歩道に上げる……とかはナシよ」ということです。

また、自転車の交差点内における通行方法をわかりやすく示し、左折巻き込み事故を防止するために『自転車専用信号の設置により自動車とは別の信号制御』や『自転車の停止位置を自動車よりも前出しする』ことを等を検討する、『二段階右折時の滞留スペース』を確保する……といったことが書かれています。

これが「交差点部の設計」の「基本的な」考え方です。

そして、「2.2 交差点部において空間確保に制約がある場合の考え方」では、空間確保についてどのような順番で検討すれば良いのか、左折可の交通規制や分離帯による左折導流路のある交差点でどのように空間を再配分し交錯を防ぐかが書かれています。安全対策が困難な場合は『代替路を検討するものとする』ともあります。

■ではどんな整備携帯が考えられるのか

上記を踏まえ、では実際にはどんな自転車通行環境の整備形態が考えられるのか。実は、ここからが長いんです。読むのが大変です。強いて言うと以下の3種類に大別されると思います。

a.自転車道や自転車専用通行帯をそのまま交差点に接続可能な場合
b.自転車道や自転車専用通行帯をいったん終わらせなければいけない場合
c.混在環境で整備された場合

空間に余裕があれば、自転車道や自転車専用通行帯が交差点まで続いて、そして交差点内には自転車の通行位置が示され、交差点の先にはまた自転車道や自転車専用通行帯があって……というふうになります。これはわかりやすい。

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一方で後者、つまり空間に余裕がなかったりする場合、自転車道や自転車専用通行帯をいったん終わらせなければいけない場合は、交差点の手前から、クルマと自転車が混在して走ることを示す表示がなされることになります。

車道混在、つまり『「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を少しずつ読む」(8)車道混在の場合』で紹介した、混在環境が、ここでも出てきます。

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自転車道や自転車専用通行帯ではなく、そもそも前後が混在環境で整備された場合も、言わずもがなです。

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その他にも、太い道路に細街路が接続されているケースや、三叉路についての例も示されています。下図はぞの一例です。

細街路。

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三叉路。

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■左折導流路があっても自転車は本線を直進させる

大きな道路だと、左折レーンが分離していて(左折導流路)、自転車がいちばん左を走っていると直進のしようがないケースがあります。このガイドラインでは、このようなケースの自転車の通行空間については、次のように書かれています。

・分離帯による左折導流路のある交差点における自転車通行空間は、本線(直進車線)に沿って連続して設置するものとする。ただし、左折自動車が減速し左 折導流路に移行する区間(以下、分流部という。)では、自転車との交錯が生じ ることから、自転車通行空間の延長線上の部分に自転車の通行位置及び通行方向を明確化し、左折自動車と混在することを示す路面表示(例えば、矢羽根型等)を設置する他、交錯が生じる手前において、看板または路面表示を設置し、 自動車、自転車双方への注意喚起を行うなどの安全対策を検討するものとする。
・左折導流路においては、左折する自動車と混在するため、自動車に対して速度抑制するよう注意喚起する看板または路面表示を設置することが考えられる。
・交差点流出側の導流路については、自転車の安全性を確保するための方策の一つとして加速車線の廃止を検討することが考えられる。

図で見たほうが早い。

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この図は、「交差点部の設計」部分におけるハイライトのひとつかなと思っています。このような整備形態が増えてくれば、自転車側は当然、自分は直進するんだ、左折するんだという意思の表示が大事になってくるでしょう。

左折導流路がなくて、ただ左折車線がある場合の処理はこうなります。

・直進する自転車と左折する自動車の交錯を防ぐため、道路や交通の状況に応じて、左折可の交通規制を見直すとともに、信号制御の見直し、自転車専用信号の設置、道路の幅員構成の見直しによる車道左側部における自転車通行空間の確保、交差点内における自転車通行位置の明示等の安全対策を検討するものとする。
・安全対策が困難な場合は、当該交差点の前後については自転車ネットワーク路線とせず、代替路を検討するものとする。

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ただ、信号制御の見直しと言いましても、自動車運転免許を有していながら矢印信号が理解できないドライバーがいるのも事実です。こちらも、自転車の意思表示が大事になってきそうです。

今のところ、直進のハンドサイン(合図)というのはありません。合図が無ければ直進することになるわけですが、現実として自転車側には、右手を横に出して「左折“しない”」という意思の表示は必要になるでしょう。

そう、手の合図は「足りない」のです。

自転車の手信号が足りない!!|ふぐのようす.

……といったところで、なんとか「II. 自転車通行空間の設計」を読み終えました。長かった……。

(Gen SUGAI)

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